さいたま市桜区の荒川沿いにある『やまとハーブ』山崎利江(やまざきとしえ)さんの畑にお邪魔すると、まず目に飛び込んでくる色とりどりの自生したハーブ。
普段目にする加工されたハーブから受ける小さく可憐な印象からは想像できない、生き生きとした様子に胸が踊ります。
子どもの頃からハーブを始めとした植物が大好きだったという山崎さんに、ハーブ農家になったきっかけやハーブの魅力、「自生」へのこだわりについてお話を伺いました。
目次
心に従って選択することで気がついたハーブの魅力
――山崎さんがハーブを好きになったきっかけを教えてください。
山崎さん : 20代で会社員の頃、仕事をしすぎて体のあちこちに不調が出てしまったんです。その時に、飲んでいた薬の副作用で具合が悪くなってしまって。どうにか薬に頼らず不調を治したいと思っていた時に、たまたまハーブに出会ったんです。
最初はリラックスする目的で、純粋に気になるハーブを選んでハーブティーにして飲んでいました。
飲み続けていく中でどういう作用があるのかを調べてみると、その時の不調の改善を助けてくれるハーブを感覚的に選んでいたことがわかったんです。
――すごい!その時の感覚でびびっときたハーブが、作用もバッチリ当てはまっていたんですね。
山崎さん : それから各ハーブの特徴や作用を勉強するようになって、ハーブをどんどんと好きになっていきました。
また、日常の中にハーブと触れ合う時間が増えていくと、癒しとなっていたり自分を取り戻す感覚になれることにも気づいて。
子どもの頃からの植物好きが、現在の日常に繋がっていた
――ハーブの魅力にどんどん気づいていかれたのですね。インスタグラムを拝見すると、ハーブに限らず様々な植物の写真を投稿をされていますよね。植物がお好きなのは子どもの頃からですか。
山崎さん : そうですね。祖母が畑をやっていたので、子どもの頃はお手伝いをしたり畑に生えている草でよく遊んでいました。シロツメクサで草冠を作ったり、花の蜜を吸ってみたり、ボサボサ生えている草をカットして床屋さんごっこをしたり。
怪我をした時には、おばあちゃんに教えてもらって草を切りそのエキスを薬代わりに塗ったりもしました。
自然に触れる時間が私にとって何よりも楽しかったんですよね。
――植物と触れ合うことが日常の一部だったのですね。
山崎さん : そうですね。大人になっても変わらずその時にやっていたことを続けている感じです。
日常生活の中では色々考えすぎてしまうことも多いのですが、
自然に触れることで頭の中を一旦クリアにすることができるんですよね。
――確かに、日常の中で頭の中をクリアにする時間はすごく大切ですよね。山登りもお好きだと伺いましたが、どんなふうに楽しまれていますか。
山崎さん : 自生している植物の観察がメインです。
同じ植物でも自生している植物の方がエネルギッシュで、見た目が美しかったり葉の色が健康的であったり。土がほとんどないような岩場に生えていたりするんですよ。
畑周辺ではなかなかお目にかかれない光景です。
――それは山ならではですね。インスタグラムで、お子さんと山登りをされている写真を拝見しました。私は2歳の子供がいるのですが、子供と一緒に自分が好きなことを楽しむ姿が素敵だなと思いました。お子さんとはどんな風に山登りを楽しまれていたのですか。
山崎さん : 最初は違った理由をつけて山登りに誘っていたのですが、徐々に私自身が植物観察を楽しみたくて誘っていることがバレてしまって(笑)。
それから子どもたちは「しょうがないな〜、お母さんが植物を観たいのなら一緒に行ってあげるよ!」と言って、ついてきてくれていましたね。
なので、私が見つけたいハーブを共有して一緒に探してもらったり。
目的の植物を探しながら歩くので、山頂までとっても時間がかかるのですが(笑)。
――巻き込む力が素晴らしいです(笑)。山登りの度にお子さんたちもハーブを始めとした植物に詳しくなりそうですね。
山崎さん : そうですね。ハーブは家でも日常的に活用しているので、周りの子供たちに比べると植物やハーブに付いて詳しいのではないかと思います。
子供も自分で気分や体調に合わせてハーブを選んで、ハーブティーを飲んだりもするんです。
野菜を例にハーブをより身近な存在にする
――お子さんもハーブを日常的に使用しているのですね。私も子供に好きなことを紹介して、興味を持ってもらえれば一緒に楽しみたいなぁと思いました。山崎さんが「自生」している植物に惹かれるようになったのはなぜだったのでしょうか?
山崎さん : 以前イギリスに行った際に、その時私が育てていたハーブと同じものが自生していたのですが、大きさや生え方が全然違って。何というか勢いがあってすごく元気だったんですよね。
自生している方がエネルギーも高いことを知って、出来るだけその土地に自生するような土地に合ったハーブを育て、地域の人に届けたいと思うようになったんです。
――自生して元気に育っているからかエネルギーも高いのですね。地域の人に届けたいと思うようになったのはなぜだったのでしょうか。
山崎さん : その土地に自生するハーブは、その土地の人にとって必要な作用を含んでいることが多いんです。
例えばルイボスティーの原料である「ルイボス」というハーブは、南アフリカのケープタウンより北の山脈に囲まれた日差しが強く乾燥した高原地帯でのみ自生します。
その過酷な環境から自身を守ろうと、抗酸化作用を持つようになるんですよね。
昔は人々にとって作物が育たない土地における空腹を満たす貴重な栄養源でしたが、今では過酷な環境の中で健康に生活するうえで欠かせない飲み物として活用されています。
ハーブと聞くとハードル高く感じる方も多いのですが、普段旬の野菜を食べるように、自生した旬のハーブを地域の人にもっと使ってほしいですね。
――野菜を例にするとハーブがグッと身近なものに感じますね。
山崎さん : そうですね。
昔からどうやったらハーブを広められるかと考えていて、ある時に野菜と関連付けてみたらもっと身近に感じてもらえるのではないかと思ったんですよね。
実はそのひらめきから会社員を辞めて、市民農園(※)で働き始めたんです。
農園の一角にハーブガーデンを作らせてもらって利用者さんに「ほうれん草にはビタミンや鉄分がたくさん入っていますよね。このネトルというハーブにも同じような成分があって貧血予防にいいんですよ」と野菜を例に出してお話をすると、ハーブを身近に感じてもらえたんですよね。
市民農園での活動を通して、ハーブにどんどん詳しくなってくれる方もいてすごく嬉しかったです。
※サラリーマン家庭や都市の住民の方々のレクリエー ション、高齢者の生きがいづくり、生徒・児童の体験学習などの多様な目的で、 農家でない方々が小さな面積の農地を利用して自家用の野菜や花を栽培する 農園のこと
「市民農園」を通じて人が元気に過ごすきっかけを作る
――今後はどんな活動をされていきたいですか。
山崎さん : 今は自分の畑のみですが、いつか新たに市民農園を作りたいと思っています。
基本的に作業は一人で黙々と行うものですが、お互いの育てている植物などを通じて自然と会話が生まれ、その場がコミュニティになっていくんですよね。農作業は運動や日光を浴びる機会にもなります。
人が元気に過ごすために必要な要素が市民農園にはつまっていると思うんですよね。
ハーブや市民農園を通じて地域の人が元気で過ごすきっかけになれたら嬉しいです。
――素敵な活動ですね。引き続き応援させてください!本日はありがとうございました。